グルタチオン点滴療法
グルタチオン点滴とは?
グルタチオンは、肝臓などで生成される抗酸化物質で、3つのアミノ酸(グルタミン酸、システイン、グリシン)から成るペプチドです。この重要な物質は、私たちの健康を保つために多くの役割を果たしています。
グルタチオンの体内濃度は20代をピークに徐々に減少していきます。加齢とともにこの濃度が低下するため、抗酸化力や解毒力が弱まることが知られています。これは、免疫力の低下や酸化ストレスの増加と関連しており、さまざまな健康問題を引き起こす可能性があります。
また、グルタチオンは、口から吸収しても体内に吸収されにくいという特性があります。そのため経口摂取では高い効果が期待できないので、点滴で直接体内に入れることがおすすめです。点滴で投与することにより、血中濃度を迅速に高めることができ、高い効果が期待できます。
グルタチオンは美白効果があることから「白玉点滴」とも呼ばれています。メラニン生成を抑制することで、シミやそばかすの予防・改善に寄与し、肌のトーンを均一にする効果が期待されます。
また、グルタチオンは、パーキンソン病の治療効果をはじめ、解毒作用や肝機能改善などの効果があり、医療現場で広く使用されている安全な成分です。点滴と経口剤は日本では医薬品となるため、医療機関での取り扱いになります。パーキンソン病についてはまだわかっていないことが多く、治療効果には個人差があります。
グルタチオン点滴に期待できる効果・効能
美白・美肌効果
活性酸素や過酸化脂質は、皮膚や血管などのからだの細胞を傷つけ、老化を早めるお肌の天敵。例えば、過酸化脂質はたんぱく質と結合して褐色老化色素をつくり、皮膚に沈着することで老人性のシミとなります。グルタチオンはシミの原因となるこれらの物質と反応して、消去する働きがあります。主に点滴や注射で体内に取り込むことにより、その強力な抗酸化作用で活性酸素や過酸化脂質を除去します。
抗酸化作用
強い抗酸化作用をもつグルタチオン。グルタチオンが、老化、ストレス、紫外線、適度な運動や疲労など様々な要因で発生する活性酸素と反応し、消去する働きをすることで細胞を損傷から守ります。
デトックス・肝機能改善
今ではアンチエイジングや美白効果で有名なグルタチオンですが、もともとは肝機能障害や薬物中毒に対して使用される成分でした。グルタチオンは特に肝臓の細胞内に多く含まれ、その働きを助けています。
肝臓はアルコールや薬、老廃物など、からだにとって好ましくない遺物や毒性物質を体の外へ排出する大切な臓器。グルタチオンは、肝臓で作られる消化液「胆汁」の生成・分泌を助け、肝臓のデトックス機能を高めます。
近年では、歯科の詰め物に使われる「アマルガム」から溶け出すことのある、銀などの有害重金属の解毒にも効果が期待されています。
グルタチオン点滴でパーキンソン病を治す
パーキンソン病とは、手足のふるえ(振戦)、硬直、動作緩慢や姿勢の異常が見られる病気で、進行性であり有効な治療法が確立していないことから難病指定されています。主に高齢者で発病しますが、40歳以下で発症する若年性パーキンソン病のケースもあります。症状が進行すると、自力での生活や歩行が難しくなり、日常生活での介助が必要になります。
パーキンソン病は、大脳基底核の線条体という部位でのドーパミンの不足が原因であることが判明しており、標準治療ではドーパミンを補うための薬(L-dopa)を使います。しかし、L-dopaの効果は一時的であり、L-dopaにより活性酸素の産生が増加し、病気の進行を早めるという警告もなされています。
一方で、グルタチオンは脳にとって最も重要な抗酸化物質の一つであり、脳を様々な有害物質から守る役割を担っています。パーキンソン病患者の脳内において、この重要な物質であるグルタチオンが減少していることが分かっています。この事実をもとに、イタリアのSassari大学のチームがパーキンソン病患者にグルタチオンを点滴投与したところ、症状の顕著な改善が認められました。米国においては、Dr.Perlmutterがこの治療法を積極的に行い、非常に有効な治療であると報告しています。 南フロリダ大学においてもグルタチオン点滴の有効性が報告されています。
グルタチオン点滴のその他の適応疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- がん化学療法による抹消神経障害
- 重金属解毒
- 風邪の初期症状
- つわりの軽減
- 閉塞性動脈硬化症 など
グルタチオン点滴はこんな人におすすめ
- 美白・美肌になりたい人
- 肌のシミやくすみが気になる人
- ストレスが多い人
- 体のデトックスをしたい人
- 慢性的な疲労感がある人
- お酒を習慣的に飲む人
- 金属アレルギーがある人
- 老化を予防(アンチエイジング)したい人
グルタチオン点滴の安全性
日本では既に40年以上も前からグルタチオンを自家中毒、つわり、妊娠中毒、薬物中毒、慢性肝炎の治療に使用していました。妊婦への使用が認められていることから分かるように、副作用が非常に少ない、安全率の高い医薬品です。薬の副作用の治療に使われることもあります。
なお、米国では抗がん剤の副作用による指先のしびれ(末梢神経障害)、閉塞性動脈硬化症など様々な疾患の治療に使われています。
グルタチオン点滴の副作用
グルタチオンは体内にもともとある物質で、大きな副作用はありません。ただし、高用量で投与する場合には注意が必要です。必ず医師に相談の上、行ってください。
■グルタチオン製剤は副作用の発生率が0.4%と低く、妊娠中でも安全に投与できます。
しかし、通常投与量の10倍以上の高用量であるため、副作用には十分に注意が必要です。稀に頭痛と吐気を訴えることがありますが一過性で、投与を中止により速やかに改善する場合が多いですが、すぐに医師にご相談ください。
■製剤添付文書によると、総症例数6,522例(非経口投与4,772例、経口投与1,750例)のうち、副作用が報告されたものは、24例(0.4%)で、食欲不振、悪心・嘔吐、発疹等が主なものであります。また、静脈内注射時にアナフィラキシー様症状があらわれたという報告もあります。
(1) 重大な副作用
アナフィラキシー様症状(0.1%未満)
(2)その他の副作用(0.1%未満)
過敏症 (発疹等)・消化器 (食欲不振、悪心・嘔吐等)
グルタチオン点滴の注意点
【パーキンソン病の治療の場合】
■ビタミンB6はパーキンソン治療薬のレボドパの作用を減弱させるため、ビタメジンやシーパラなどのビタミンB6を含有している製剤は使用しません。
■パーキンソン治療薬の急な減量は転倒などを引き起こすので慎重に行います。まずは安定剤、眠剤から減量・中止していきます。
【がんの治療の場合】
■がん治療を目的とした高濃度ビタミンC点滴と同日にグルタチオン点滴を行うことができません。なぜなら、高濃度ビタミンC点滴で生成した過酸化水素をグルタチオンが消去するからです。
グルタチオン点滴の量・頻度
■点滴の場合
大量(600mg~1200mg)を直接血管から補充します。週に1~2回が理想的ですが、まずは1か月に1回程度を目安に点滴される方がほとんどです。グルタチオンの量にもよりますが、1回およそ30分程度かかります。効果を感じるまでに個人差はありますが、2日ほどで効果がもとに戻る場合が多く、回数を重ねるごとに効果の持続も長くなるため、継続することが大切です。
■注射の場合
点滴に比べて少量(200mg~300mg程度)となるので、時間がない時におすすめです。
治療費
1回:5,000円から15,000円前後が目安です
自費診療のため費用、医療機関や投与量により異なります。
詳しくは最寄りのクリニックへお問い合わせください。
法定記載事項
■ 本治療は医薬品医療機器等法上の承認を得ていない(保険適応外での使用)ため、医療保険制度は使用できません。自費診療となります。
■ 急性・慢性湿疹、蕁麻疹、妊娠悪阻等の治療で承認されている「タチオン」という製剤を用いて治療します。各医療機関が、薬品卸会社などを通じて購入します。
■ 本治療に使用できる同一の性能を有する他の国内承認医薬品はありません。
■ 米国を中心とした諸外国で、グルタチオン点滴療法に関する臨床研究が行われていますが、その中で重篤な急性または慢性の副作用は報告されていません。