点滴療法研究会マスターズクラブ副会長/鎌倉元氣クリニック
院長 松村 浩道 先生
オゾン療法にはさまざまな適用法がありますが、日本における適用法はそのほとんどが大量自家血液オゾン療法(MAH)です。しかしひとたび世界に目を向けると、MAH以外の方法も広く用いられ優れた成果を上げています。特に疼痛性疾患の治療にはオゾン局注法が欠かせない手技になっており、MAHとの併用、あるいは単独で頻用されています。こうした現状を鑑みて、今回は疼痛性疾患に対するオゾン療法について述べたいと思います。
【痛みの分類とオゾン療法の適用法】
痛みは、その時間経過によって急性痛・亜急性痛・慢性痛に分類されますが、臨床上問題となることが多いのは慢性痛です。慢性痛は神経生理学的に、侵害受容性疼痛(変形性関節症、関節リウマチ、がんなど)、神経障害性疼痛(椎間板ヘルニア、帯状疱疹後神経痛、糖尿病性神経障害など)、痛覚変調性疼痛(線維筋痛症、複合性局所疼痛症候群など)に分類されます。
オゾン療法は上述した時間経過による分類のいずれの段階においても、また神経生理学的分類のいずれの区分にも適用されます。痛みの治療として用いられるのは主にオゾン局注法と全身的適用としてのMAHで、疾患にもよりますが、この両者を組み合わせて実施した際の治療効果が最も高いという報告が多く、筆者も同意見です。
【主な適応疾患と適用法】
ISCO3(International Scientific Committee of Ozone Therapy)のガイドラインにはエビデンスレベルに応じた適応疾患が記載されていますが、レベルA(十分な科学的根拠がある)に該当するのが脊椎疾患(椎間板ヘルニアなど)で、椎間板内へのオゾンガス注入や傍脊柱筋への浸潤などが行われます。レベルB(科学的根拠がある)に該当する疼痛性疾患として、変形性関節症、筋骨格系あるいは軟部組織の疼痛性疾患などが挙げられており、これらに対して主に患部周辺への局所浸潤が行われるほか、関節症に対しては関節内注入が実施されます。
これらの適用法のうち、椎間板内注入は特殊な装置を要し、やや難易度も高い方法ですが、それ以外は比較的簡便に行うことができ、臨床の現場で用いやすい手技です。例えば椎間板内注入の代わりに傍脊柱部への浸潤を、関節内注入の代わりに関節周囲への浸潤を行うことによっても一定の効果が期待できます。
オゾンマスタートレーニングコースでは、疼痛性疾患に対するオゾン療法について、動画での実技も交えながら詳しく解説しましたので、ぜひご覧いただけますと幸いです。