エキスパートインタビュー
柳澤 厚生
【経歴】 杏林大学医学部卒、同大学院修了。 医学博士。米国ジェファーソン医科大学リサーチフェロー、 杏林大学医学部内科助教授、杏林大学保健学部救急救命学科教授を経て、2008年より国際統合医療教育センター所長。また、神奈川県鎌倉市にスピックサロン・メディカルクリニックを開設、高濃度ビタミンC点滴療法を初めとする様々な点滴療法を日本に導入。米国先端治療会議認定キレーション療法専門医(CCT)、アメリカ心臓病学会特別正会員(FACC)。2009年第10回国際統合医学会会頭。2011年にカナダに本部がある国際オーソモレキュラー医学会において名誉の殿堂入り。2012年より同医学会の会長に就任。2014年アントワーヌ・ベシャン賞受賞。著書に「ビタミンCががん細胞を殺す」(角川SSC)、「超高濃度ビタミンC点滴療法ハンドブック」(角川SSC)、「医師と患者のためのキレーション療法」(点滴療法研究会)、「グルタチオン点滴でパーキンソン病を治す」(GB)などがある。
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1.点滴療法を始めるきっかけについてお聞かせ下さい
点滴療法に興味を持ったのは、友人の父親がキレーション治療で狭心症が良くなったのがきっかけです。それは心臓専門医の私の想像を越える回復でした。これは何かあると感じ、その年に開催されたACAM (米国先端医療会議) に出席し、キレーション治療の講習、認定試験を受けました。その後もマイヤーズカクテル、高濃度ビタミンC点滴療法(IVC)、グルタチオン療法、アルファリポ酸療法などの研修を受けています。
2.点滴療法をどこで修得しましたか?
高濃度ビタミンC点滴療法に関して世界中から最新情報が集まるIVCシンポジウム(主催:リオルダンクリニック)、キレーション療法の指導を行っているACAM(米国先端医療会議)など、点滴療法の最新情報を常に勉強しています。最近では、海外の著名な専門家を日本にお呼びして講演いただき、当会の会員の先生方と一緒に勉強しています。また、海外のドクターとよくメールで点滴処方の相談をしたり、海外の最新の研究・臨床情報などの情報を共有しています。
3.点滴療法の師匠はいらっしゃいますか?
元ACAM(米国先端医療会議)会長のMichael Janson先生とリオルダンクリニック所長のRon Hunninghake先生です。Janson先生からは、キレーション療法、食事療法、サプリメント療法を教わりました。カンサズ州ウイチタ市郊外にあるリオルダンクリニック(http://www.riordanclinic.org/)はビタミンC点滴によるガン治療を確立したことで有名で、リオルダンプロトコルと呼ばれる高濃度ビタミンC点滴療法のプロトコルの編纂・更新をしています。Hunninghake先生からはビタミンC点滴によるガン治療、外来診療、検査等を直接教わりました。2013年3月にも日本でHunninghake先生にご講演いただきました。
4.点滴療法の得意分野は?
私が診療しているクリニックではビタミンC点滴療法・キレーション療法・マイヤーズカクテル・グルタチオン点滴療法を主におこなっています。また、点滴療法だけでなく個人個人にあった療法や生活スタイルの提案をしています。
5.これまでに印象に残っている患者さんについてお話しください。
運の良いことに新しい点滴療法を取り入れた第1号の患者さんが全て著効例だったことです。 第1号の患者さんが無効例だと続ける自信がなくなってしまうでしょうから、私は幸運でした。
キレーション治療の第1号の患者さん(84歳男性)は心筋シンチグラムではっきりとした再分布像が見られる典型的な狭心症でした。 高齢なので冠動脈造影を拒否されてキレーション治療を選ばれたのですが、まもなく狭心症発作はなくなり、6ヶ月後の心筋シンチグラム再検査では全く正常所見でした。 心臓専門医の立場からも驚いています。
高濃度ビタミンC療法の第1号の米国人の患者さん(43歳男性・横浜在住)は非ホジキン悪性リンパ腫でした。
お兄さんが自然療法医で、高濃度ビタミンC療法を勧められて来院しました。 全身に転移所見が見られましたが、高濃度ビタミンC療法開始して3ヶ月後には鼠径部リンパ節が縮小し、6ヶ月後には後腹膜病変をわずかに残すのみとなりました。
グルタチオン点滴療法の第1号の患者さん(75歳男性)は、嚥下障害がひどく、歩行障害もあって杖が必要でした。 6ヶ月後には普通に食事ができて、体重は回復し、杖も必要なくなっています。
最近では3年以上持続する耳鳴りを訴えてきた73歳の男性の方にマイヤーズカクテルを処方しました。 1回目の点滴後しばらくしたら、いつのまにか片耳が聞こえるようになり、3回目には両耳の耳鳴りがほとんど感じないぐらいまでに改善しました。
6.スピックサロン・メディカルクリニックについて。
スピックサロン・メディカルクリニック(http://www.spicclinic.com/ 神奈川県鎌倉市小町2-12-30-3F 0467-22-3000 自費診療)にて診察をしています。 鎌倉駅から徒歩5分の鶴岡八幡宮に向かう途中にあります。 ビタミンC点滴療法・キレーション療法・マイヤーズカクテル・グルタチオン点滴療法などの各種点滴療法とヒーリングマッサージを組み合わせています。 また、食事療法やサプリメントにも力を入れています。
7.今、一番興味のある点滴療法は?
高濃度ビタミンC点滴療法による癌治療です。 米国国立衛生研究所 (NIH)、国立がんセンター (NCI)、米国食品薬品局 (FDA)の科学者らが共同で高濃度ビタミンC点滴療法のエビデンスを示しています。 私自身も効果を実感しています。 現在、米国では1万人の医師・自然療法医・統合医療医らがこの治療を行っていて、急激に増えています。 現在は高濃度ビタミンC点滴療法の臨床研究が世界中で行われており、今後の研究に期待しています。
8.点滴療法を始めたばかりの方へのメッセージをお願いします。
点滴療法はエビデンスのある治療法です。 ただ保険診療で認められていない点滴療法も多く、日本ではまだまだなじみが薄いです。 しかし、一度点滴療法をマスターすると、日常診療では限界にある疾病をカバーする強力な武器になります。 新しい点滴療法を導入する時は、見様見まねの自己流ではなく、ぜひエキスパートの先生から教わってください。
9.点滴療法研究会の今後の展望についてお聞かせください。
点滴療法を日本に正しく広めていくことが私のミッションです。今後は国内・海外の点滴療法のエキスパートの先生方とセミナー開催を続けていきます。また、副作用がほとんどない、または軽度な副作用しかない点滴療法が、将来患者さんの治療の選択肢として一般的なものになるよう、点滴療法研究会は会員の先生方とともに普及に努めていきたいと考えています。